「ほず」を落とさぬ「ほず袋」は呑兵衛のお守りに
昔から酒に酔って正気を失うことを「ほずを落とす」と言う。お酒による失敗がないよう、仏様の加護があるようにと、着物の帯などから一つずつ手作りし、住職が祈祷したお守り「ほず袋」を販売。寺の本堂、またはオドデ館で入手可能。
曹洞宗無量山 円通寺
九戸村大字伊保内20-52-1 0195-42-2407
日の出より日没(仏事の際は不在)
https://hozu.jimdo.com/
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取材日 INTERVIEW 2018.11.19 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです。
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仏の知恵を授かる「ほず袋」
九戸村にある「円通寺」さん。地域の人に慕われる中、ここで手作りされるお守り「ほず袋」が今、人気だ。お酒による失敗がないように、そして商売繁盛や家内安全に、と住職の上村陛巳さんが祈祷されているお守り。
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そもそも「ほず」の語源は、本性や正体、正気を現す「本地」という神仏に関わる言葉。昔話の中でも、酒に酔っても「本地」は忘れない、という言い回しがでてくるそうだ。地域では、酒に酔って正気を失うことを「ほずを落とす」、常識がないことを「ほずなし」などと言われてきた。お寺がある九戸村の伊保内地区周辺には「伊保内の市日さ行って、ほず買って来い!」という言い回しが残る。何か悪さや失敗をやらかしたときに、しっかりしろという叱り文句で、その言い回しがほず袋の始まりだ。
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今は、お寺の本堂と道の駅おりつめのオドデ館、ふるさとの館で「ほず」は手に入れることができる。ただ1つ1つ手作りされているため、品切れの場合はご了承を。
呑兵衛のお守り、ということで自分自身や職場の同僚に、お酒で失敗しませんように、と笑いながら買っていく方もいれば、ほずがつきますように、と賢くなるように、元気でありますようにと願いながら家族に買っていく方もいる。「ほずがつく、というのは仏の知恵を授かるということ。その次がお酒に呑まれないようにということ」。
九戸村や二戸地域以外でも聞かれる「ほず」の言葉、他の方言バージョンとして「ほんず袋」「ほじ袋」「ほで袋」というのも時折、登場するそうだ。着物の帯などを使うため、どのお守りも少しずつ柄が違っていて、これも楽しみの1つ。
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今では珍しい1つ1つ丁寧に手作りされたお守り
そしてこのお守りは住職の奥様の美智子さんが1つ1つ手作りしている。取材日、ちょうど本堂のほず袋がなくなってしまい、慌てて制作いただいているところを見学させてもらった。
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普通の布を使うこともあるそうだが、着物の帯から作る場合、大変なのはまず準備。帯にもよるそうだが、刺繍の施された帯の裏地は、糸を切るなど処理が必要。普通の布とは違うため、お守り用に切りそろえるまでが一苦労だ。
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準備した布にミシンで、ほず袋、と刺繍し縫い合わせて袋の形に。ミシンは2種類。以前から自宅用に使っていたミシンは、袋状に縫うためのもの。もう1台は縦文字刺繍ができるミシン。以前は文字刺繍まで手作業だったというから驚き。
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紐を通す部分は、釘などで打ちつけて穴をあける。そうしてできあがったお守りを最後に陛巳さんが祈祷。なんとご祈祷の様子はyoutubeで見ることができる。
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伊保内の市日で「ほず」を買う
円通寺さんで、「ほず袋」を作られるようになったのは、数年前。もともとは近くの葛巻町の方が洒落も交えて「ほずぶくろ」は販売し始めたのが元祖。
九戸以外の周辺地域でもどうしてなのか「(現九戸村の)伊保内の市日さ行って、ほず買ってこい!」という言い回しが広く伝わっていた。何かやらかして怒られると、その言葉が出てくる。「伊保内」も「ほず」もよくわかっていなかったけれど、その言い回しなら記憶にある、という方までいた。
葛巻町で最初に「ほずぶくろ」を作って、販売された方もそれはもちろんご存じで、ある日、陛巳さんが呼ばれて葛巻町を訪れた。「伊保内で“ほず”売らないから、おらんだで売り始めた!」「いやいや、“ほず”は伊保内で売ってるものだべ」「俺もそう思うけど、売ってないんだからしょうがなかべ」と何ともユニークな会話が交わされて、それじゃあ早く伊保内でも、という話になった。それが作り始めるきっかけになった。
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試行錯誤をして2年後販売を始め、今では名実ともに「伊保内」で「ほず」を買うことができる。口コミで話は広まり、陛巳さんが説明するよりも早く連れの仲間にほず袋を語ってくれる方までいる。
どうしてほずを買うのは伊保内だったのか、そこはまだ諸説あるそうなのだが地域の歴史や文化や人の暮らし、全てに繋がっていく。「なくしちゃいけない言葉だ」と陛巳さんも話す。
自分のために、普段お世話になっている人のために、大事な誰かのために。
九戸村で「ほず」、買えます。
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取材日 INTERVIEW 2018.11.19 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです。