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卵から育てる貴重な天蚕の布たち

自ら飼育し、鮮やかな薄黄緑色の繭から糸を紡いだ天蚕のマフラーや布、マンダとも呼ばれるシナの木を繊維状にして織ったバッグなど織物を製作。昔の紙帳簿や和紙をひも状によって織った布や組織織など、高い技術で丁寧に仕上げられた作品は貴重なものばかり。
一戸紬まゆ玉会
[取扱先] いちのへ手技工芸館

イチノヘツムギ  ダマカイ

取材日 INTERVIEW 2018.11.24 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです

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天蚕で作る絹織物、昔ながらの裂織り等、高度な技術をもった作り手

一戸町にある、どんぐり村の赤屋敷タマさん。少し前まで、ご夫婦で自給自足の生活をしながら、畑作や炭焼き、天蚕の飼育、機織り、木工などを体験できる「どんぐり村」を運営されていた。今も、「一戸紬まゆ玉会」の看板をかかげ、天蚕の織物製作を続けている。カイコの飼育から始め、自ら糸を紡ぎ、機織り機で織る、という貴重な製法を行う方。高度な技術が必要とされる「組織織(そしきおり)」の他、裂き織り等も製作しており、いちのへ手技工芸館の裂織工房でも製作や指導を行っている。裂織工房の方も、赤屋敷さんの天蚕を使用して、作品を織る。
一戸紬まゆ玉会の作品は、いちのへ手技工芸館で購入が可能だ。


天蚕のマフラー。柔らかな手触りが、心地よい。

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天蚕や天蚕と麻糸などを組み合わせて織られた布で製作された手提げかばん。機織り機で丁寧に1つずつ、織られた布。色合いも、模様も様々。赤屋敷さんが織った布をバッグやかばんにするのは、裂織工房の方が担当されている。

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シナの木の繊維を「よって」編む、マンダ織の技術

これは、マンダ織の手提げバッグ。「マンダ」というのはシナの木のこと。一戸町の御所野縄文博物館でも、ものづくり体験の素材として使われている木の繊維のことだ。薄い紙のような繊維を、よってひも状にし、編むと丈夫なバッグできあがる。他にも、自然素材を使ったコースターなどもある。

 

今では珍しくなってしまった自然素材の編み物だが、二戸地域のおじいちゃんおばあちゃんには馴染み深い人も多く、今でも難なく作ることのできる人もいる。紐のように「よる」という作業。赤屋敷さんはすっとやってみせるのだが、それがなかなか難しい。

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建具や組子細工を製作する山井木工さんは、大物から小物まで様々。

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裂織工房の方も、赤屋敷さんにまだまだ教えてもらわないと、と研究熱心だ。特に組織織は、織り機の使い方も複雑で、赤屋敷さん程に織れる方は、まだいないという。

こっちは、山井木工の静子さんが織っている途中のもの。これだけでも、取材スタッフにはかなり複雑。

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こちらが、赤屋敷さんが織られているもの。ものすごい糸の細かさ。どこが糸で、どこが隙間か見間違うほど、「赤屋敷さんは見えるんだぁ、って言うんだけど、見えない」と静子さんも笑ってしまうほどだ。

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昔の大福帳を1枚1枚よって製作する和紙の織物

2018年の「二戸手仕事展」でも、織り機で実演を披露されており、その傍らで少し取材をさせていただいた。
目を引くのは、着物の帯。薄緑色のものは、天蚕の帯。なかなか見ることのできない貴重な帯に、思わず声があがるくらい綺麗。かつては、農家で天蚕が奨励されており、何人かのグループで取り組まれていたこともあるそう。

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薄黄色の帯は、驚くことに、和紙でできたもの。和紙を細く切り、糸のようによって、織られている。和紙を使用した作品は、他にもある。バッグも和紙を細く切り、よって紐のようにし、追っている。少し色がついているように見えるが、なんと、もとは大福帳。昔の商家などで、売買の勘定を記す元帳のことだが、それを1枚1枚細く切り、よっている。色が入っているのは、墨や印鑑の朱の色だ。

 

最初は、山形の人に頼まれて作り始めたそう。どういうものかもわからないし、どうしようかと思って山形まで、その大福帳を見に行った。織るのは何とかなりそうだが、1枚1枚よるのは大変な作業。そうしたところ、「俺、そればよってける」と旦那さんが全部よってくれたそうだ。「だから、すーぐに織れたんです。全部よってくれたんですよ」。
他にも、明治時代の本当に古い大福帳を何かに使えないかと、相談されて織ったこともある。

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お話を聞いていると、大福帳を使った織りを見せて下さった。

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ちょっと織り機の調子が悪かったらしく、山井木工の勇さんが手直し。

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年齢を重ね、体の不自由さはでてきたが、「目と耳と口は、まだ元気」と赤屋敷さんは笑う。お話を聞いているうちにも「これも、まだあと1つは作れたらな」と作品を説明してくださる。

裂織工房の方以外にも、孫嫁さんが今は、赤屋敷さんに織物を習っているそうだ。

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かつては、この地域でも赤屋敷さんのように、畑を耕し、生活道具を自分たちでほとんど作っていた頃があった。手仕事の話を聞くと、「ないから自分で作らないといけなかったんだ」という方もいる。その技術が今も息づいている。昔あった技術でも、歴史や文化、でもなく、今、この瞬間に息づいているものがある。


赤屋敷さんの作品に触れると、それを感じ取ることができる。

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取材日 INTERVIEW 2018.11.24 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです

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