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羊毛と自然の彩から生まれる暖かなフェルト作品

福祉施設で羊を飼育しながら、利用者の製作した羊毛ざぶとん、羊のマスコット、ブローチなど羊毛製品や草木染めの織物を展示販売している。可愛いデザインの作品が多く、下記HPからの注文も可能。

ひつじ工房 アドナイ・エレ 小さき群の里
一戸町奥中山字西田子1072-4
0195-35-3931
9:30-15:00(土日祝休み)
http://canaan-jp.net/

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取材日 INTERVIEW 2018.11.16 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです

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土地の自然を活かし、フェルト作品や手織りのショールやマフラーなどの制作と販売

一戸町の奥中山高原にある「小さき群の里 ひつじ工房 アドナイ・エレ」。福祉施設の事業所の1つで、羊を飼育し、その羊毛を利用した作品を利用者さんとスタッフさんが制作されている。国道4号を入って10分程。高原の中に佇むお洒落な一軒家で、制作と販売をされている。

一軒家でどなたかのご自宅のようなつくりのため、ちょっと入るのに緊張するかもしれないが、扉を叩いて、作品を見たい旨を伝えれば、玄関からすぐの一部屋へ。

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もこもこ、ふわふわと暖かいフェルト作品が、部屋にぎっしりと並んでいる。似通った色が複数あるものもあるが、利用者さんやスタッフさんの手づくりであるため、全て一点もの。基本的に、どの作品も草木染めで彩られており、土地の自然をちゃんと活かすことを、大切されている。胡桃や栗は近くの林から、藍染めの藍は自分たちが畑で育てていて、他には玉ねぎの皮で染めたものなども。

定番の羊毛丸ざぶとん。シンプルな模様から、風景や言葉が入ったものまで様々。

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羊毛マットやタペストリー。既製品を販売することもあるが、大きなものは何を描くか、どんな言葉を入れるかオーダーを受けて作ることが多いそう。

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ぶどうのブローチ。

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もこもこ、ふわふわの見ているだけで癒されるマスコットたち。

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リングバスケット。

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フェルト作品だけではなく、毛糸や木綿を草木染めし、ミックスして織り上げた作品も人気がある。ショールやマフラー。

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お洒落な洋服。利用者さんが織った布を使って、ボランティアさんが制作されたそう。一点もののため、販売は、ほぼイベントと工房のみ。


毎年、少しずつ作品も変わるが、最近はイベントを行うと、フェルト作品制作用の原毛や専用の針、1枚の状態の手織り布を購入される方が増えたという。

工房に訪れることができるのは、平日のみのため、それ以外は「カナン市場」という通販の利用が便利。ただ、全てが一点もので、実際の色や風合いとは異なるため、ご注意いただくとともに、その変化をお楽しみに。ネット等で予定を確認し、イベント販売で実物を手に取るのもおすすめ。

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高原の中の一軒家で羊を飼育し、1つずつ手作業で作られる

取材日には、少しだけ作業風景も見せていただいた。
今は、6頭の羊を飼育中。残念ながら、本日は、羊さんお引越し中のためお会いできず。作品に不足する分の羊毛は購入して制作している。

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作品の基本的なデザインを行うのは、施設のスタッフさん。もちろん専門にデザインを勉強したわけではなく、日々試行錯誤しなら、何を作るのかは決めるそう。毎年、制作する種類も少しずつ変えていく。取材を受けて下さったスタッフの長内さんも「やるしかないと思って」と笑う。

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それぞれに得意分野があり、驚くほど手先が器用な方も

ここは、一度洗った羊毛から、さらに小さなゴミを取り除く「解毛」作業。横から見ていると、気づかないような小さなゴミもちゃんと見つけて、コツコツと取り除く。「利用者さんは、みんなもくもくとやって下さるんですけど、逆に私たちがやろうと思うと、長時間集中力も必要なので、けっこう難しい作業だと思います」。この後、羊毛を機械で均一にならす「カードかけ」の作業を経て、ふわふわの羊毛ができあがる。

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こうして用意された羊毛は、座布団やブローチ、人形など主にフェルト作品に使う。紡いで毛糸にすることもあるそうだが、作業できる人数が限られることもあって、手織り用の毛糸は、購入したものを、ここで草木染めし、使う。

羊毛をごしごしこすって固めるのは、主に利用者さんの作業。こちらは帽子を制作中。

もうお1人の男性は、ふわふわの羊毛を粒状にまとめる作業。これをさらに固めて作品にしたり、部分的な模様をつけたりする。この紐のようにしていく作業、なぜかこの方がやると上手にできるそう。手のひらで、するっと滑らせると何故かできる。他の人がやっても、こんなふうにはならないそうで、スタッフの方も驚いたのだそう。

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マットに絵を描いていく作業。色のついた羊毛を配置して、ちくちくと専用の針で刺し固めていく。刺し固めた後は、またこすって固める作業が発生するため、そこは利用者さんの作業になる。

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こちらは、織り機。

 

複雑な織りの作業も一度覚えると、スタッフさんよりも早く作業する方もいるそう。「うちの基本は、経糸が木綿糸、緯糸が毛糸で、他にはあまりないような織りなので、“手織り”と呼んでいるんですけど。利用者さんによっては、経糸が毛糸で、緯糸にしっかりした木綿糸を使っていたりもします」。色は、スタッフさんがいくつか用意する色の糸から、利用者さんが組み合わせる。手織りの作業に限らず、利用者さんお一人お一人に得意作業があり、スタッフさんも驚くほど手先が器用な人も多いという。

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癒されて、喜んでくれる場所になれば

「小さき群の里」は、障がいのある方の就労支援や生活支援を行う社会福祉法人カナンの園さんの事業所の1つ。パンやお菓子をつくる工房もあり、地域でもよく知られた施設だ。その「小さき群の里」の活動場所の1つとして建てられたのが、「ひつじ工房アドナイ・エレ」。もともと飼育していた羊の毛を利用し、スウェーデンのフェルト技法を教わり、プレハブ小屋から、活動が始まったそう。

 

2004年には、地域の方にも活動を知ってもらえればと、施設の敷地から地域の一軒家に移ってこられた。実際にこちらに移ってから、地域の方を始め、様々な出会いは増えたという。

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技法もアレンジを加えながら、作品の幅も広げてこられた。当初は、たたいたり、こすったりをするだけで形づくっていたが、今は専用の針も使い、細かな模様も描けるようになってきた。

 

すべてが手作りのため、オーダーなどの希望にどれだけ沿えるか等、難しい部分があるものの、イベントでのお客さんは、少しずつ増えている。「みんなで協力して作ったものを購入していただくのは、嬉しい」と長内さんも話す。羊毛ならではの暖かさはもちろんだが、草木染めのデザインも人気。「化学染料を使っていないので、明るい色のものでも洋服に合わせやすい、と言われることは多いです」。

今後について伺うと、大量生産できるものではないが、今後も展示会やフェアなどに参加し、作品を広げていければいい、とのこと。「作品を気に入って下さった方が、癒されて、喜んでくれる場所になれば」。

高原の中の工房。

工房から外を見れば、豊かな自然が広がっていて、少し日本離れした風景にも見える。その自然が存分に生かされた作品。是非、その自然まるごと楽しむために訪れてみては。

取材日 INTERVIEW 2018.11.16 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです

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