浴衣をリメイクした働き着と雑貨に囲まれた空間を訪ねる
浴衣をリメイクした働き着にできる洋服や布小物を製作する工房兼店舗。リノベされた店内には店主セレクトの食器やアクセサリー、文房具などの雑貨も一緒に販売され、居心地の良い空間が作られている。
したてやさん
二戸市福岡字下川原13 0195-23-2214
10:00-16:00(不定休)
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取材日 INTERVIEW 2019.1.7 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです。
レトロでお洒落な浴衣生地の洋服と、こだわりの雑貨が並ぶ居心地の良いお店
二戸市に工房兼店舗をもつ「したてやさん」。ご店主さんが集めたお気に入りの雑貨と、ご自身が制作される浴衣をリメイクした洋服が販売されている。二戸市の町中から、てくてくと歩いて川沿いに下ったところにある、素敵なお店だ。大きくはないけれど、リノベーションされた外見が目を引く。駐車場は、お店に向かって左手の空きスペースへ。
店内に入ると、わぁっと声が出るような世界。雑貨は、ご店主の高橋さんが1つ1つ集められたものだそう。ちょっとレトロなガラスコップやデザインの素敵な食器。中には、近隣の工房さんから直接仕入れた陶器やガラス作品もある。
クラフトマップにも掲載されている、めりこさんのアクセサリー。
ポストカードや文房具などの雑貨。陳列されているケースは、見ていると何だか懐かしい気分になり、雰囲気がある。店内や工房の家具も高橋さんが、少しずつ集められたもので、かなりの年代物も。
割烹着をはじめ、気兼ねせずに着て、作業が出来て、洗える働き着を作る
高橋さんの製作する、浴衣をリメイクした働き着。気兼ねせずに日常で着ることができて、作業もしやすく、洗える。もともとは、作業しやすく、動きやすいと割烹着を作っていたそう。
こんな柄も、浴衣なんだ、と驚くくらい素敵なものが多い。浴衣をリメイク、と聞くと、何か大事なお出かけや特別な時に汚さないように…、と思ってしまうけれど、高橋さんが作るのは「働き着」。
オーダーは受けておらず、作ったものを販売する形だが、ゆったりとフリーサイズで作られているものも多い。夏はTシャツよりも涼しく、セーターの上から着たり、重ね着をすれば、寒い季節もOK。
同じく浴衣生地をリメイクした髪ゴムやシュシュ。その時々によって、手提げバッグがあったり、ハンカチがあったり。小物は生地を提供して、別の方に作ってもらうこともあるそう。
店内を飾るインテリアも、レトロで素敵なものばかり。いろんなところに、さりげなく飾られているものがたくさんあって、顔を上げ、足元を見て、棚の向こうを覗くたびに、心が踊る。
全体的なリノベーションは、地元の工務店さんにお願いされているが、古い建具を選んだり、ペンキを塗ったりと高橋さんも作業をした、思い入れのある店内だ。
基本的に1人でされているお店のため不定休。近隣のクラフトイベントに出るため、お休みになることも。遠方から、してたてやさんを目的に行かれる場合は、お電話で確認をした方がよいかも。
工房はお店に隣接していて、お店からもガラス越しに見える。店の奥からも工房に繋がっていて、もともとは、こちらだけを工房兼店舗にしていた。今も、服を選びに来たお客さんを、時折ご案内することもあるそうで、リメイク前の浴衣が所狭しと並び、高橋さんの集めた雑貨や家具が並ぶ。
ちなみに作業場には、昔の喫茶店のドアが。知っている人が見ると、「ハンバーグ食べに行った~!」と懐かしい声があがるそうだ。
昔の浴衣を、1枚ずつ洗って糸をほどき、洋服に仕立てていく
洋服作りは、懇意にしている業者さんから、浴衣を仕入れるところから始まる。昔の浴衣は、今でも驚くほど、モダンなデザインも多い。仕入れた浴衣を洗い、糸をすべてほどいて、1枚の布にする。すべて手作業。この糸をほどく作業が最も時間がかかる作業。「ほどきが一番大変。端のちょっとまつっているところまでほどかないといけないので」。貴重な1枚の浴衣から、1着の洋服ができる。余った生地は小物になる。
高橋さんが洋裁を始められたのは、専門の学校で3年間学ばれた時から。子育て等が落ち着いた頃から、工房で制作を始めて、十数年。昔はお菓子屋さんだったというスペース使って、お店を構えたのは、約8年前。
最初は、洋服が何枚かできあがると欲しいという知人に手渡しする規模だったが、口コミや地域のイベントに出店するようになって、少しずつ周りに知られるようになった。「いろんな方に欲しいと言ってもらっているので、頑張って作ってます。自分が思うよりも、話が一人歩きしてるんじゃないなと思っているんですけど」、本当に、とつけ加えて恐縮しながら、高橋さんは笑う。「自分は本当に、作って楽しんでいるだけなので」。
今見ても斬新なデザインの浴衣が面白い
制作されているのは、一貫して当初から浴衣生地をリメイクしたもの。「意外に浴衣生地ってわからないんですよね。昔のものの方が、柄とか染めとかはお洒落で」。数十年前の浴衣のデザインは、今見ても斬新。「それが面白くって。作っているうちに、はまります」。知人が集めていた浴衣を見て、同じように少しずつ集めるうちに、どんどん惹きつけられていったという。
洗うことができて、洗えば柔らかくなり、味も出てくる。最初は、ほとんどが割烹着スタイルだったが、お客さんから他のデザインも欲しいと話があって、アレンジした洋服も作るようになった。様々な洋服を作るようになっても、「働き着」というコンセプトは変わらない。「デザインが同じでも、生地の柄が違うと全然違って見えるので、作っていて楽しい」。
自分がいいな、って思う場所を自分が作っているから
2018年には、洋服の工房兼店舗の隣にあった車庫スペースをリノベーション。新たに雑貨なども販売する店舗スペースとしてオープンした。知人を通してお店を知った方、イベントを通して知った方、様々なお客さんが地域外からもやってくる。「若い方が重ねて着たり、ショールと合わせたりしているのを見ると、お洒落だなって感心します」。外で素敵だな、って思って見ていた人の洋服が、よくよく見たら、自分が作ったものだったこともある。
いつかお店をやりたい、という決意は昔からあったそうだ。その想いは、周りにも話していた。「言葉に出すと、やんなきゃなんなくなって。それはよかったかもしれないですね」と笑って振り返る高橋さん。少しずつ、少しずつ、準備を進めて、オープンに至った。
工房の2階も特別に見せていただいた。知人たちと集まって、お喋りのできる空間になっている。
いくつになっても遅くないですよね、きっと
お話を伺っていると、高橋さんの行動力には驚くばかり。「でも人と積極的に接する性格ではなかったので、自分でも驚いているというか。やっぱり何かのきっかけで自分の持っているものを、m割の人にも引き出してもらえて。いくつになっても遅くないですよね、きっと。お店を持ったのも、50代なので、若い人にはそれを伝えてます。何歳でもできるよ、って」。お金もないし、場所もない。悩みを抱えるのは、誰も一緒。「ちょっとでも何か始めたらいいんじゃないかな、って。格好つけじゃなくて。動いた方がいいですよね」。
準備をしなければ、何にもぶち当たらない。気負わず、肩の力を抜いて、にこやかに高橋さんは言う。体調を崩していた時期もあったそう。けれど、できるかどうかわからないけれど、やりたいなと想いは消えずに、家具やインテリアを少しずつ、集めていた。中には100年前の家具も。興味のある人には宝物。それだけで、取材中にも話が盛り上がる。
庭づくりもお好きで、お店の前の庭には美しい花が咲く。クラフトマップにも載ったgardenstoreさんに作っていただいたガーデングッズも。
1日があっという間。生きている時間いっぱい使って、とにかくやろうと思って。
日々、お忙しいはずだが、作っているのが、一番楽しいと高橋さんは言う。「何作ろうか、どのデザイン作ろうか、どの浴衣の柄にしようか。あとは、それを喜んで買ってくれる人がいること」。工房にいることがほとんだが、イベントに出店すると気晴らしにもなるし、外からの刺激も受けられる。
1日があっと言う間だそうだ。「本当にあっという間に時間たっちゃって。もったいなくて。もう、この生きている時間いっぱい使って、とにかくやろうと思って焦る。一番心配なのは、健康。楽しむためには、健康がないと」と笑う。今後について伺うと、お店を使って何かイベントもできたら、ということ、あとは「健康で普通に縫えてたら、いいかな、と思います」。
行くと、何だか元気をもらえるお店。一度に大量に制作できる洋服ではないので、もし気に入ったものに出会えたら、一期一会の出会い。ちょっと肩の力を抜いて、毎日を楽しむために、のんびりと訪れてみては。
取材日 INTERVIEW 2019.1.7 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです。