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それぞれの作り手から生み出される浄法寺漆のうつわに出会う

塗りの工房と展示販売を兼ねた店舗。椀や酒器などを中心に、全工程で浄法寺漆を使用した漆器や地域の個人工房の作り手の漆器が揃う。漆の道具や映像、塗り作業の見学、体験など浄法寺漆の魅力を発信している。
​滴生舎
二戸市浄法寺町御山中前田23-6   0195-38-2511
8:30-17:00(火曜、年末年始休み) https://urushi-joboji.com/

 

【体験】つや出し体験
    漆の解説を聞き、艶出しの体験をする。

【料金】1500 円+税/1 個 【時間】30 分程度
【人数】1~ 4 人程度 要予約

テキセイシャ

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取材日 INTERVIEW 2019.1.10 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです

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国産漆の産地、浄法寺町(じょうぼうじまち)

国産漆の約7割は、二戸地域で生産される。国宝や世界遺産に使われる質の高い漆が生まれる土地。

その土地にあるのが、滴生舎。瀬戸内寂聴名誉住職でも名が知られる天台寺のすぐ近く。
浄法寺漆を塗り重ねる漆器の工房であり、展示と販売を行う店舗だ。

浄法寺インターチェンジから近く、車でのアクセスが便利。静かな森の中に佇む立地だけれど、県道6号から、道を入って少し進めば見えてくるので、わかりやすい。本数は少ないが、路線バスに乗り、天台寺停留所で降りて、歩いてやってくる方もいるそう。

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扉の両横には、漆が採取された後の「ウルシ」の木。模様のように見えるのは、漆を掻いた跡。浄法寺町内を車で走ると、ウルシの木を庭などで柵にしている家も見かける。

作り手により、少しずつ異なる「うつわ」のデザイン

店内に入ると、少し別世界に入った気になる程。柔らかい明るさの店内に、静かに漆のうつわが並んでいる。2018年に展示スペースを広げ、リニューアルOPENした、まだ新しい店内。

ご飯、汁もの、おかず、デザートと用途多様な椀。酒をそそぐ片口、そそがれる酒器。平皿。どんぶり。箸やスプーン。重箱や弁当箱。フリーカップの「ねそり」等々。作り手によって、デザインは異なる。

 

伝統の漆器。てっきり、伝統の形が決まっており、職人さん全員が、その形に沿って作っていることが多いのかと思いきや、そうではないそう。もちろん、昔から続いてきた形で作る漆器もあるが、作り手さんそれぞれのデザインがある。それぞれが、少しずつ異なり、手に馴染む感触も異なる。

だから、じっくり1つ1つ眺めていると、楽しい。よくよく見ていると、うつわの名前も異なる。

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全工程で、浄法寺漆を使用しているものには、プレートに赤いマークがついている。

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地域の個人工房の漆器が集まる

滴生舎の工房で製作された漆器はもちろん、地域の個人工房の漆器が集まる。漆は繊細な材料で、じっくり比べると少しずつ個性が見えてくる。漆の採取時期や精製方法、塗りを行った時期や湿度の違いなどでも、微妙な違いが現れるそうだ。
滴生舎は、浄法寺漆の発信を目的に建てられた。取材対応してくださったスタッフさんも「滴生舎だけではなく、浄法寺漆を使うそれぞれの作り手さんが取り上げてもらえたらと思います」と話してくださった。そのスタンスで続けてきた甲斐あってか、最近は遠方から訪れるお客さんも少なくないそう。

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店内では、漆器の製作過程を学ぶこともできる。木製の木地から、漆を何層にも塗り重ねていく過程。塗りの道具。漆掻きの道具。漆掻きの映像も流れていて、じっくりと自分が今手に取っているものが、何なのか、を知りながら、考えながら購入することができる。

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すぐ隣の部屋が、工房。窓越しに、実際の製作行程を見学することができる。そっと塗師の世界をのぞいてみることができる。


窓の向こうは、仕事場。この日は取材用のカメラで許可を頂いて、窓越しに撮影させていただいた。フラッシュをたいてパシャパシャ撮るのでなはく、そっとのぞいてみていただければ。

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漆掻きや「ウルシ」の木を描いたTシャツも。

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こちらのスプーンは手彫りのもの。形にこだわり、手間を惜しまず、丁寧に彫られている。そのデザインと漆で、口当たりがとても滑らか。使い勝手がいい。

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使う人も、育てていく浄法寺漆の「うつわ」

漆のうつわを求めてくるお客さんは、常連さんも多い。遠方から訪ねてくるのは、展示会などで浄法寺塗を知り、購入するなら現地で、と滴生舎を目指してくる方。年代は、若い方から年配の方まで様々。浄法寺塗の特徴は、シンプルで素朴なデザインで、飾るものではなく、毎日の食卓で使うための「うつわ」。

日々、使う中で、艶めいてくる。
「使っていくと、艶がどんどん出てくるんですけど、それを楽しみに買っていただくお客様が多いです。使ってこそできる傷も、愛着が持てるような。長く大事に使えるから、お客様にも“楽しみに、うつわを育てるね!”と買っていただいてます」。修理の相談も受け付けており、長く使ったものを手放さずに、修理して使い続ける方も多いそう。


デザインに温かみがあることや、温かい汁物を入れても、持つ手は熱くならないため、お客さんが多いのは、寒くなってくる秋頃。

人気は毎日使える椀。お酒が好きな方は、酒器。既にお椀を持っている方だと、カップ型のねそり。

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地元の方にも、特別な時でなくても、日々使ってほしいもの

普段のお客さんは、遠方の方が多いが、地元でも、浄法寺漆の漆器を持っている家は多い。立派な片口や家族の分一式が出てくることもある。ただ、地元だからこそか、特別な時に使う、というイメージが強い。「普段はもったいなくて使えねくてなぁ!しまってる!って言われて、いやいやいや使ってください~、って何べんもやり取りしてますよ」とスタッフさんは笑う。日々使うことで、適度な湿度が与えられ、いい状態が保たれる。

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(手前が取材対応してくださったスタッフさん)

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体験ができるのも、嬉しいところ。漆塗りのプレートを磨いて、ストラップを作る体験。

受付は、店舗や工房の状況にもよるので、絶対体験をしたい!という場合は、お早めに。GW等のお休みには、企画展やイベントが開催されていることも。普段はできない体験ができることもあるので、そのイベントを狙ってくるのも、おすすめ。

「ウルシ」を育てる土地の水や森。漆を掻く人。漆を塗る塗師。漆のうつわを販売する人。その「始まり」からの流れを見て、感じられる場所。歩いても行けるほど近くには、天台寺や漆の歴史を学べる歴史民俗資料館、向かいには、冬期以外は昼間にお蕎麦を食べられるお店もある。
漆を知らなかったけれど、興味を持った方も、いつかは漆器が欲しいと思っていた方も、存分に漆の旅ができる土地。伝統工芸品と言われれば、敷居を高く感じるかもしれないけれど、毎日使える自分の「うつわ」に出会える場所へ。

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取材日 INTERVIEW 2019.1.10 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです

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