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建具から組子模様細工まで、彩り豊かな木工品を作る職人

木製建具の他、木材の天然の色や木目を生かした菱細工の小箱やストラップ、色の異なる木片を枠にはめ込み、時には地域の風景まで描く組子模様細工の行燈や衝立などを製作している工房。組子の手作りキットも販売しており、気軽に工芸品に挑戦できる。

山井木工
一戸町高善寺字古舘平37-5  工場:0195-32-3117
[取扱店] いちのへ手技工芸館、なにゃーと物産センター
製品等の問合せは、事業所へ

ヤマイモッコウ

取材日 INTERVIEW 2018.12.12 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです

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木材の色の違いで模様を描く「組子模様細工」と、三角形の木片を組み合わせて作る「菱細工」

一戸町内で手仕事や工芸品について、話を聞いて回ると、山井木工さんの名前を頻繁に聞く。御所野縄文博物館にある「あんぎん編み」の機械。町内恒例の寄席イベントのステージ、裂織の織り機。どれも山井木工さんのお仕事。昔から続くご本業は、建具屋さん。各家に合わせて障子やふすま、ドア、家具などを製作し、その際に細やかな組子の細工を施すこともある。近年では、組子細工の作品も多く、特徴的なのは、小さな木片を組み合わせ、木材の色の違いによって模様を描く「組子模様細工」と、三角形の木片を組み合わせて作る「菱細工」。

 

作品は、いちのへ手技工芸館やなにゃーと物産センターで、主に販売をされるほか、オーダーなども受付ける。イベント等への出品も精力的で、組子細工や木工品の製作体験も頻繁に町内で行っている。作品が気になる方は、まずは取扱店で手に取ってみることがおすすめ。特に、いちのへ手技工芸館には、山井木工さんがいらっしゃることも多く、直接お話を聞くこともできる。

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ストラップ、コースター、製作キット、ボックス、行燈、衝立、風鈴飾り…

組子細工の作品は、ストラップなどの小さなものから、テーブルまで様々だ。


組子模様細工のコースター。これは、製作キットも販売されており、気軽に組子細工に挑戦できる。子どもの体験でも人気だが、手仕事の好きな方が購入されていくことも多い。山井木工さんもお客さんの反応に、販売してから驚いたという。

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衝立や行燈。衝立は、机や棚の上に置くようなサイズから、部屋の間仕切りや目隠しに使う大きなサイズのものまで様々。幾何学的な模様を描いたのものもあれば、実際に地域の風景を描いたものもある。

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菱細工は物入箱やティッシュボックスが多い。サイズは様々だが、その可愛らしいデザインからか、小さめのものが人気があるそうだ。

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木工品。くるくる回る風鈴飾り。吊るしておくと、くるくる回って、風鈴が鳴り、涼やかだ。イベントでも、くるくる回っているのを、お客さんがじーっと見て行くという。(ちなみに取材スタッフも後日購入)

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組子模様細工は、数百、数千、万の木片を使って、地域を描く

山井木工は、夫婦で経営をされている。取材対応してくださったのは、代表の山井勇さんと静子さん。勇さんが28歳の時に山井木工を始め、42年間続けてきた。

勇さんが作品のアイディアを考案し、製作し、「喋ったり販売は、私の方が得意なので」という静子さんが主に販売面を担当する。けれど、静子さんが塗装を行ったりもするし、勇さんも質問には色々と答えてくれる。掛け合いの楽しいご夫婦だ。

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取材日には、工場内へ。若い職人さんが働く横を、お邪魔にならないように、そろりと通る。かつては、周辺地域も含めると木工所が20~30軒ほどあった。今はそれも数えるほどに減り、若い職人さんを雇用している木工所は、珍しい。

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菱細工のもとになる木片。これを丁寧に組み合わせていくと、隙間なく綺麗な模様が出来上がる。ちょうど取材日には、オルゴールの小箱等を製作されていたところ。

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阿部木工さんのアイディア満載の木工品。

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こちらは、組子模様細工のもとになる木片。それぞれの色が異なり、計算しながら組み合わせていくそうだ。見せていただいたのは、行燈と、お隣の青森県の弘前城を描いた細工。見た瞬間に、あ、とわかるほど、しっかりと特徴が表現されている。

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木片は本当に小さい。はめる枠はミリ単位で決めているそうだが、後は手の感覚、身体の感覚ではめ込んでいくという。途中で緩くなってしまっても、最後がきつくなってしまっても駄目。特に大きな作品は、そのバランスが難しい。

また、六面を繋げて田舎の風景を描いた衝立も製作、展示会で賞をとったことも。約10万個の木片を使用したという。展示会で入賞を重ねた賞状が、事務所内には数多く並んでいる。

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「手探りの手づくり」作り手自身が作り上げてきた手技工芸館

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もともとの専門は建具屋、減る需要に何とかしようとして始めた木工や工芸品

さんが中学校を卒業した当時、この地域で卒業して働く人が一番多くなったのは「職人」の仕事だった。さんも現在の職業訓練校にあたる学校で、木工を学び、それからずっと木工一筋だ。

 

山井木工を始めた最初の頃は、ほぼ建具専門。組子細工や木工品は製作されていなかった。時代の流れとともに、家のつくりも変化し、建具の仕事が減少。何か新しいものをしなければ、と傍らでまずは、木工品を始めた。「それで、建具をやりながらも、建具組合の展示会に出品するようになって、この組子細工が生まれてきたんですよ」と静子さん。展示会では、自分独自のものを製作して出品する必要があり、勇さんが景色も描けるような組子模様細工を考案した。

 

発想のきっかけは、木材ごとの色。黄色、赤、茶色の濃い薄いなど、よく見れば様々だが、見ただけで木材の種類がわかる人も、今はもうあまりいない。何かできないかと思って考え出したのが、色の違いを利用して模様や絵を描くことだった。興味を持ってもらえれば、この色は杉の木、漆の木等と木材の種類を知るきっかけにもなる。それを展示会だけではなく、本業の建具を製作する際にも組み合わせるようになり、コースターなどの小物やキットも作った。

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「やっぱり、そこで生きていくってことは、何でもできなきゃいけない」

今も組子細工を製作するのは、主にさんだが、若い職人さんたちにも枠を作らせたり、製作に立ち会わせる。若い人に技術を隠すことなく、伝えるのがさんの方針だ。職人の育成にも携わってきたが、木工所も減り、建具製作だけで地域の木工所を盛り立てていくのは難しい。工芸品や木工品にも力を入れて、若い人が1人でも2人でも続いてくれたらいい、という。

とはいえ、工芸品の製作を続けていくこと自体も、大変なこと。「でも、(木工品や工芸品をはじめてから)人の繋がりっていうのは、広がった。役場や商工会さんとも繋がってるから、町で何かをやりたいうときに、いろんなことができる。ちょこちょこ頼まれるしね。やっぱり、そこで生きていくってことは、何でもできなきゃいけない」と静子さんは言う。

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力を入れる後進の育成「若い人が地域にいないと、後々困ることになる」

町のイベントで使う300本の灯篭を作るために、石川県まで行ったこともあれば、寄席のステージを作るために、東京まで本物を見に行ったこともある。「じゃあ、次にそういうことをやる時、そういうことできる木工所がいくつあるか。若い力がないとできない。地域にいないと、後々困ることになる」。勇さんが職人の育成に力を入れる理由の1つだ。建具や家具、木工等の世界でも、パソコンを使ったりと今と昔では使う技術も異なる。「若い人にはかないません」と冗談めかして、さんは笑う。

 

静子さんも、「作る商品によっては、手作業じゃなくて、機械がちゃんと使えないといけない時もある。機械も操作する技術が高度になってきているし、だから技術持った若い人も必要なんです」。技術的な面以外もそうだ。「夢とかパワーとか若い人たちは、やっぱり違うんですよ。階段を2段も3段もダンダンダンと上がっていくような、(自分たちは)おいおいおいって感じで後をついて歩いて(笑)、そういう若い人の勢いがある」と笑う。もちろん指導すべき点は指導するが、根本的なところでちゃんと若い人を応援する、というスタンスがある。「若い人たちに任せた仕事の後に、お客さんとこに行くと、いっつも褒めてくれるんですよ。だからいい仕事してくれるんだな、と思って」。山井木工にいる若い職人さんは、ものづくりの技術を競う「技能五輪」で全国1位を取った方もいる。

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さんも静子さんも、地域の団体や木工関連の集まりに顔を出し、役を引き受けることも多い。「いろんなところに顔を出せば、情報ももらえるし、人のつながりができる」。必要な材料を誰かが探してきてくれることもあるし、木工関係で業者さんを探している人を誰かが繋いできてくれることもある。

 

頼まれて、襖張りなどの講習をやったこともある。「仕事を持っていかれる、って思う人もいるかもしれないけど、講習受けただけで、プロのように、うまくはできるわけではないので」と静子さん。ただ、人の繋がりはできるし、宣伝効果になることもある。町中で「先生!」と声かけられたことも。講習を受けた人がお世話になりましたと言って、不要なら薪にするという木材を「まずは、山井木工さんにみてもらって」と軽トラで持ってきた人もいる。「木材の上に、ちょこんと野菜までのっかってて」と進さんも笑う。そんなエピソードが、お二人には尽きない。

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木工品や工芸品を製作していて面白いのは、やっぱりお客さんの反応をもらう時。「お、これは通用するかな、って思える」。ただ、作ればいい、ではない。自分の技術を育てるためには、人と接する機会がないと、と言う。お客さんの希望を取り入れるために、相手の意見を察することもできなくなってしまう。「もの作って、もの言われて、んじゃ次はこれ作ったらどうかってなっていかないと」。組子模様細工は、人に教えることにも力をいれている。自分で組子模様細工の衝立を作りたい、という人に教えて、最後の衝立にする仕上げは山井木工さんがやる、ということもしたことがあるそうだ。

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話を聞いていると、いつ休んでいるのかと思うほど、いろんな話が次から次へと出てくる。地域や事業の課題も話しながら「ものづくりっつうのは、面白いことだ」と勇さんが言った。

 

山井木工さんの作品を見るのも、使うのも、教えてもらうのも、きっと世界が広がって、面白い。

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取材日 INTERVIEW 2018.12.12 ※施設情報、入荷状況や価格は取材時のものです

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